福田 洋一 先生インタビュー

先生は人文情報学をどのようにお考えですか。

 人文情報学という学問は実際にはない、というか、将来そういうものができないとも限りませんが、今はそういうものがあるとは考えていません。むしろ、人文情報+学科という切り方をした方がいいと思います。もう少し詳しく言うと、「人文と情報の架け橋になる視点を学ぶ学科」ということです。

 これは僕のこれまでのホームページなどでも、あるいはオープンキャンパスの模擬授業のストリーミング配信などでも言ってきたことですが、「文系の人は情報処理の方法を知らず、一方理系の人は文系が何を必要としているかを知らない。文系の人のために、どのように情報処理の技術を応用するかを考えるために、その両方のことを知っている必要がある、そういう人材を育てる学科だ。」ということなります。

先生の研究のテーマについてお話下さい。また先生の専門分野の研究と人文情報学の関係についてお話を聞かせて下さい。

 僕の専門の研究分野は、チベット仏教です。特に、チベット仏教最大の宗教的天才であるツォンカパという人の理論的な教義を、存在論、認識論、言語論という観点から研究しています。またチベット独自の論理学の形成過程を、非常に古い文献を読んで再構成しようとしています。

 僕にはもう一つコンピュータ、特にプログラミングの趣味があります。これが好きなんですね。いろいろプログラムを作っていると、時間を忘れてしまいます。

 その場合、まずは自分の研究分野、特にチベット仏教関係の研究に役に立つプログラムを作ります。自分の役に立つことは、必ずしも大勢ではないにしても、他の誰かの役にも立ちます。自分が必要だと思うものを作れば、それが同時に人の役に立つ、というスタンスでこれまでいくつのもプログラムを作り、その一部は公開して、何人かの人に(必ずしも多くはないかもしれませんが、少数の熱心なユーザーがいます。)使ってもらっています。また一部はその都度の仕事をこなすために、自分で使うだけのものあります。この場合でも、それは人の仕事を手伝ってあげることが多いですね。つまり人の役に立つツール作りです。

 もう一つ、あまり知られていないことですが、MacOSXには、僕が作ったチベット文字のフォントが収録されています。MacOSXでチベット文字を表示する人は、みな僕のフォントを使うことになっています。これは、大谷大学の真宗綜合研究所が開発したOtani University Tibetan Lanugage Kitというものの一部で、大谷大学は、こういうようにコンピュータでチベット語を使うために世界的なレベルでの貢献をしています。これは自慢していいことですよ。MacOSXでチベット語を使うときには、大谷大学のロゴの入ったTibetan – Otaniというキーボードが表示されますからね。

先生のゼミの特徴を教えて下さい。

 僕のゼミは、週にゼミの時間一コマだけ、というのではなく、他にサブゼミ一つ、演習を前期3コマ、後期2コマ、講義を後期1コマ履修する必要があります。全部僕の授業です。これだけでも週に5コマ同じメンバーが顔を合わせて授業を受けることになります。さらに、夏休みには毎週オンラインで課題を出し、メールでプログラムを送ってもらうことにしています。どの授業も一度休むと挽回するのが非常に大変になりますので、基本的には全出席が条件です。

 演習の内容は、Unix、プログラミング、TeX、XHTML、CSS、SQLデータベース、CGIによるWebアプリケーションなどです。これら演習群全体を通してゼミの指導を考えています。

 これら技術的なことを基礎的な知識として身に付けた上で、何らかの人の役に立つWebサイトを作る、というのが最終的なゼミのテーマであり、また卒論のテーマでもあります。これまでのゼミ生も色々なものを作ってきましたし、前の年度の卒業生が手がけたものを、次の年度の学生がさらに発展させていく、という場合もあります。中には、一般に公開できるレベルのものを作る学生もいます。それは何も技術的に高度である必要はありません。高度でなくても、必要としている人がいて、それがあれば便利なものを作れれば、そういう人に喜んでもらえます。そういうものを目指してほしいと思います。

人文情報学科を志望する学生に一言お願いします。

 人文情報学科自体は、色々な先生がいて、それぞれが別々の考え方で人文情報をどのように捉えるかを追求しています。それだけバラエティに富んだ内容の授業やゼミがあるということです。全てに共通しているのは、コンテンツを重視するということ、問題を自分で見つけ、自分で考え、それをどのように表現していくか、ということを重視しています。これは専門学校にも、理科系の大学にもありません。しかし、現実の社会で情報処理を活かすためには是非とも必要な姿勢です。

 このような、現実社会で必要とされてる情報処理の技術と、それを具体的な問題にどのように応用していくかを追求してください。